使い道



建築業界での3Dプリンターの使い道


コンピューターで作成したデータを再現

ここまで3Dプリンターについて説明してきましたが、やはり3Dプリンターの最大の魅力は「コンピューター上で作成したデータが再現できる」ということに限るのではないでしょうか。これが建築業界でも活躍できる大きなポイントです。細かい作業が重要となってくる建築業界での大きな需要になるのではないでしょうか。

一般的な物づくりというのは、部品と部品を組み合わせながら作っていきます。

しかし、3Dプリンターでは平面上に素材を映し出し、徐々に高さという立体感を出していきながら少しずつ形を作っていくという方法です。そのため、3Dプリンターの製造過程を見てみると、製品の断面図を見ているのと同じ状況で、徐々に積み重なりながら製品が出来上がっていくのが体感できるのです。

平面でしかわからなかった図面が、立体的にデータがわかりやすく、図面が読めないような人でもきちんと把握できるようになったのです。


活用の幅が広がる

今では、3Dプリンターを幅広く活用している建設会社が多くなってきています。大手ゼネコン会社の「清水建設」は、2015年に3Dプリンターで建築物の模型を作成して少し話題となりました。100kgにもおよぶその模型は、細かな部分にまできちんと作成されることから、一気に建築業界でも取り入れる会社が増えてきたのです。

そして、同じく大手ゼネコン会社の「大林組」は、2017年10月に建築物のセメント部材を作成する3Dプリンターを開発して話題ともなりました。そもそも、セメント部材を作成するには高度な技術が要しますが、3Dプリンターを使うことで様々な形のセメント部材が自由に作成できるようになったのです。このことから、大幅な効率化を図ることに成功したのです。

そんな3Dプリンターも、今では国外でも大きく活用され始めています。中国では、2015年の段階で3Dプリンターを利用して住宅が建築されました。また、ドバイでは2016年に3Dプリンターで建設されたオフィスビルまでも建築されたのです。

今の日本の現状では、建築基準法で定められた基準をクリアしていないため、中国やドバイのような建設は困難となります。しかし、この先3Dプリンターの技術が上がってくれば建築基準法もクリアされ、3Dプリンターで建設された様々な建築物が実現されるかもしれません。


人材不足の解消

今では建築業界でも大きな話題となっている3Dプリンターですが、建設用3Dプリンターを利用する際のメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。

まず、物づくりにおいて専門的な技術を要していなくても、3Dプリンターの使い方を知っていれば誰でも同じぐらいのレベルで物が作れるということがあります。

今現在、建築業界では人手不足が大きな懸念材料として世間を騒がしています。後継者不足もそうですが、何よりも新しい人材が建築業界に入ってこないというのが大きな問題点でもあります。しかし、建築基準法で定められた基準さえクリアすれば、この3Dプリンターで建設も可能となるかもしれないのです。

上記でも説明していますが、3Dプリンターの使い方さえ知っていれば建設可能となるからです。ということから、3Dプリンターは人件費の削減につながるのと同時に、建築業界での人手不足解消にも大きく役立つのではないかと思います。


廃棄資材が削減される

建築業界の人材不足の解消も一つのメリットとして挙げられますが、建設の際の廃棄資材が削減されるのも大きなメリットと言えます。

3Dプリンターで物づくりを行う際、通常の建設方法とは違って素材を平面上に吹き付けていく方法を取りますので、廃棄資材が削減されるのは間違いありません。それと、3Dプリンターの材料として廃棄資材を活用する場合がありますから、3Dプリンターは環境に優れた製品であるのです。


24時間以内で住宅の建設が可能になる

3Dプリンターによる住宅を開発したあるアメリカの企業は、移動式3Dプリンターを使えば24時間以内に住宅を建設することが可能と明言しています。

しかも、一つの住宅を建設するのにかかる費用が、日本円にして約42万円程度で建設可能というのにも驚きです。ちなみに、そのアメリカの企業が3Dプリンターにより建設した住宅を公開したところ、アメリカでは住宅として販売するための必要とする条件も満たしていたそうです。

今後は、「台風や地震にも耐えらえる安全で強靭な3Dプリント技術で建設可能であることを証明するため、アメリカの最も厳しい住宅建設にかかる規制を満たす家を建設したい」と語っているそうです。日本ではまだ3Dプリンターによる住宅の建設は認められていませんが、アメリカでは3Dプリンター住宅が普通になるという日もそう遠くはないような気もします。

建築規制が厳しい国の普及はまだまだ困難

建設する際のコスト、建設する人材の技術力を考慮すれば、3Dプリンターでの建築は非常に便利というのはわかって頂けたかと思います。

しかし、建築規制が厳しい国での普及はまだまだ困難になるのは間違いないでしょう。ですので、とにかく安くて多くの住宅を建設したいような発展途上国の方が先に普及されるとも言われています。

といったように、前例があまりない建設法のため、法規制というものが大きく左右されるのは間違いありません。特に、構造体の耐震性についてはさらに法規制が関わってきます。まずは実績を積み重ね、3Dプリンターにより建設された住宅が日常的な自然現象にどれだけの抵抗力を持てるかというのがこれからの課題となりそうです。

傾斜地や狭い土地の建設は困難

今現在の3Dプリンターシステムでは、建物周辺に広い土地があり、尚且つ傾斜でないところというのが求められています。

ですので、アメリカのような土地が広くて、住宅の敷地も広く使っているような国ではすぐにでも実現可能と言えます。ただ、日本での実現となると、土地が広く使える郊外に限られてくるのは間違いないでしょう。

もちろん、現状は1対のアームがレールに沿って移動するシステムなのですが技術開発によって4本足で歩き回れるような形態になれば、傾斜地でも対応できそうですし、建物周辺に必要な広い土地も少なくて済みそうです。

ということから、3Dプリンターのシステム向上が、都市部での住宅建設可能に大きく左右されてくるのです。